SHIINBLOG

丸の内で働くアナリストのライフログ

お金に関して、専門的なこと身近なことを綴ります。

【いまさら】米大統領選挙の世界への影響を考えてみた

トランプ氏が大統領選に勝利してからもうすぐ一か月、だいぶ落ち着いてきたので金融マン的目線も入れながらまとめてみます。

 

 

世界は多極化の時代に向かい、世界の勢力図が変わる。G7、G20ではなく、G0の時代へ。

ここ数年の世界の動向を見ると、オバマアメリカは世界の警察官になりきれていませんでした。

 

中国、ロシアは先進諸国の意見に耳を貸さず武力行使を含む平和維持を主張し、兵力増強を続けた結果、現在では兵力で西側諸国を上回ったと言われています。

英語を公用語とするフィリピンのデュテルテ大統領は、米国大統領に「地獄に堕ちろ」と英語で言い放ちました。

 

インターネットの発達でグローバル化、無障壁化があらゆる面で進んだ結果、強く大きい国に住むことは大きなメリットではなくなり、税制や労働者の高い賃金などデメリットが目立つようになりました。

 

2016年も気付けば12月ですが、今年は英国国民がEU離脱を望み、米国国民が世界の警察官の座を放棄することを選択した歴史的な年でした。

 

2017年、世界動乱の舞台はオーストリア、オランダ、イタリア、フランス、ドイツに移っていきます。これらの国々で大きな国政選挙が行われます。当然、EU離脱を公約に掲げる候補者が登場してきます。

 

特にドイツの動向には世界の注目が集まります。メルケル首相への風向きが変わりつつあるからです。

移民問題を抱えるメルケル首相にとって、トランプ氏の勝利は大誤算でした。

 

トランプ氏とメルケル首相の関係

 

メルケル首相の最も大きな功績に、対ロシアの経済制裁があげられます。2014年に彼女はEU28カ国をまとめ上げ、シリア、ウクライナに侵攻していたロシアに経済制裁を行いました。

 しかしトランプ氏は当選後早速プーチン大統領と電話会談を行い、「関係改善をした」とコメント。その直後にロシアはシリアへの空爆を再開しています。

 

 http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXLASGM15H7Q_V11C16A1FF1000/

 

ドイツ経済は自由貿易に支えられています。また歴史的に財政規律を重視する国家のため、国資大盤振る舞いの景気刺激策などは行いません。それに移民に対する考え方でも、トランプ氏とは噛み合わなそうです。

 

 米大統領選にトランプ氏が勝利した際に、世界中の指導者がトランプ氏の勝利に祝福の声明を出すなかで、メルケル首相は挑発的な声明を送っています。さすがですね。

 

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/219486/111100022/

 

鉄の女メルケルは本当に百戦錬磨ですから、トランプ氏にしっぽを振ることは考えにくいです。外交、経済、思想など、様々な面で米独は対立することになるんじゃないでしょうか。

ユーロは対ドルで売られ続け、大統領選後に年初来安値をつけましたし、大注目です。

 

 

日本への影響

短期的な見方では、米国の景気誘導策や財政出動FRBの利上げにより、円安は進み、デフレに歯止めがかかり、好景気が訪れるとポジティブな観測がされています。

 

中期的にはTPPの破棄やNAFTAの見直しといった保護主義の流れがグローバル企業や家計消費、イノベーションの創出にダメージを与えるかもしれません。

 

安倍首相の外交手腕、バランス感覚は近年の首相では相当優秀な部類に入りますから、世界の潮目が変わる難しい時代ですが、何とか頑張ってほしいですね。

 

投資家への影響

上院下院ともに共和党が獲ったので、政策面がより不透明になりました。公約はあてになりませんし、しばらくはボラティリティが高まりそうです。

FXとかの超短期的な売買はすごくやりがいありそうですね。

 

でも中長期では、かなり怪しいと思っています。

 

確かに世界の株価は上がっています。

 

「そんな過激なことはできないよ。なんだか良い大統領になりそうじゃん。」と思う人が世界中に増え始めていること、手始めに行われる税制改革は、富裕層が大好きな減税であること、あと財政的なことが理由ですね。

 

でも、大統領選直後の株価とその後の株価は真逆になる場合が多いんです。

 

ルーズベルトトルーマンオバマといった小学生の教科書にも載るような大統領が選ばれた直後の世論は悲観的で、株価は大幅下落しましたが、その後にそれ大相場を形成しました。その逆のケースも何回も起きています。期待値が高くて、蓋を開けたらダメ大統領のケース。公約なんて全然あてにならないんです。

 

今のご祝儀相場に中身(経済成長・景気拡大)が伴うかどうかは不透明です。漫然とした期待感に包まれ上昇を続けるマーケットですが、閣僚人事が決まり、1月20日に正式に大統領に就任。その後100日間の通称「ハネムーン期間」中に政策が明らかになるにつれて、一喜一憂を繰り返すでしょう。

 

金融マンが株を勧めてくるタイミングですが、調子に乗りすぎたり、高値を掴んでしまわないように注意しましょうね。

 

ちなみに、もし保護主義貿易が行われても、中長期で米国経済はトランプの言うように強くならないとの見方があります。

ピーターソン国際経済研究所によると、トランプの保護主義貿易によって米全体では480万人の失業者が出て、米国経済は深刻なリセッションに陥るとされています。

これはきっとその通りですよね。中国が米国の製造する旅客機を買わなくなったら、シアトルの経済は壊滅しますし、その逆も然り。

世界はグローバル化してますから、それに逆流することは痛みを伴います。

 

 

トランプという人物について

 

政治や経済については素人だし、人脈も不足しています。選挙時に彼を支援していた人物だけで組閣をすることは不可能でしょう。

閣僚が徐々に明らかになってきていますが、

「トランプ候補に仕えるのは嫌だったが、米大統領に仕えるのはOKだよ。」

という人材が今後どれだけ出てくるかが重要ですね。

 

しかし、思想や公約は筋が通っています。

 

任期中は「メイクアメリカグレードアゲイン」を本気で実行するんじゃないでしょう。

書籍「マスコミが報じないトランプの秘密」を読むと、米国が彼に何を期待しているのかがよくわかります。

決して鳩山民主党のように「やらせてみるか」で選ばれたわけではありません。米国が彼をリーダーに選んだことで、本当に世界の潮流が変わるかもしれません。

期待と不安が入り混じっていますが、世界の歴史が変わる2017年が始まるのが、少し楽しみです(笑)